【2026年10月直前】「その賃金差、説明できますか?」改正同一労働同一賃金と中小企業のための「職務評価」実践ガイド
はじめに:10月1日目前!国が問う「その賃金差、説明できますか?」
2026年(令和8年)9月16日、厚生労働省は 人事労務マガジン特集第248号 において、全国の中小企業事業主・労務担当者を対象とした無料オンラインセミナー『働き方改革推進支援セミナー2026秋「その賃金差、説明できますか」』の開催を告知しました。
いよいよ2026年10月1日より、パート・アルバイトや契約社員を雇い入れる際の労働条件通知書に、「正社員との待遇差の内容や理由について、会社に説明を求めることができる旨」の明示が法的に義務化されます(同一労働同一賃金特集ページ – 厚生労働省)。
もし現場のパートスタッフから、
- 「同じラインで作業しているのに、なぜ私には賞与が出ないのですか?」
- 「新人の指導もしているのに、なぜ役職手当や精皆勤手当がつかないのですか?」
と質問されたとき、経営者や労務担当者は自信を持って合理的な理由を説明できるでしょうか?
「昔からの慣習だから」「パート契約だから」という回答は、法律上完全にNGです。本記事では、国が推奨する「職務分析・職務評価」の手法を交え、中小企業が10月1日以降のトラブルをゼロにするための実践ノウハウを徹底解説します。
なぜ「その賃金差、説明できますか?」が重要なのか?
今回の法改正・ガイドライン改定において、中小企業が押さえておくべきポイントは以下の2点です。
① 「説明義務」が形式から実質へ
労働条件通知書に「説明を求めることができる」と書かれることで、従業員側の権利意識が高まり、待遇差に関する質問や相談が現場で直接出やすくなります。
② 曖昧な回答は「損害賠償・是正指導」のリスクに直結
会社側が客観的・合理的な理由を説明できない場合、労働局による助言・指導の対象となるだけでなく、裁判等で「不合理な待遇差(不法行為)」と判断され、過去に遡って手当相当額の損害賠償を命じられる判例が相次いでいます。
【現場目線シミュレーション】中小企業N社で起きたリアルな相談事例
中小企業の製造現場で実際に起こり得るシチュエーションをもとに、正しい対応手順をシミュレーションしてみましょう。
事例:部品製造・組立業 N社(従業員20名・うちパート8名)
- 正社員Aさん: 月給24万円+賞与年2回+役職手当(月2万円)+通勤手当全額支給。
- パートリーダーBさん(勤続6年): 時給1,150円(賞与なし・手当なし・通勤手当は上限月5,000円)。正社員と同じ組立ラインに入り、新人パートの教育係も担当。
10月1日以降に発生した相談
Bさん「10月から契約書に『正社員との待遇差について説明を求められる』と書いてありました。私はAさんとほぼ同じ作業をして、新人の指導まで任されているのに、なぜ役職手当も賞与も出ないのでしょうか?」
NGな対応とトラブルへの発展
- 社長の回答: 「うちは昔からパートさんには賞与も役職手当も出さない決まりなんだよ。パートなんだから理解してほしい」
- 結果: Bさんは納得できず、モチベーションが急激に低下。「不当な差別的扱いだ」として労働局のあっせんを申し立てる事態に。
正しい解決策:国の「職務分析・職務評価」の活用
N社は、厚生労働省の 働き方改革特設サイト から働き方改革推進支援センターの無料コンサルティングを活用。
- 職務内容の切り分け: AさんとBさんの仕事を比較。「突発的なクレーム対応や最終品質責任」「他部署への応援や異動の有無」に明確な差があることを客観的に整理。
- 手当の見直し:
- 通勤手当: パートだけ上限を設ける合理的理由がないため、正社員と同様に「実費全額支給」へ改定。
- 役割手当の新設: 新人指導や現場まとめを行うパート向けに「パートリーダー手当(月1万円)」を新設。
- 説明の実施: 整理した職務基準をもとに社長がBさんと面談。「責任の範囲と異動の有無」の違いを丁寧に説明し、新設した手当を提示したことで、Bさんも深く納得し信頼関係が強化されました。
【現場のつまずき解説】中小企業がやってしまいがちな「手当の3大落とし穴」
最高裁の判例や厚生労働省のガイドライン上、特に中小企業が指摘を受けやすい手当の格差です。
落とし穴①:通勤手当に格差をつけている
「正社員は全額実費支給、パートは1日500円まで」のように差をつけている会社は要注意です。通勤にかかる実費コストは雇用形態によって変わらないため、合理的理由がない限り「不合理な格差(違法)」と判断される可能性が極めて高い手当です。
落とし穴②:精皆勤手当を正社員だけに支給している
「欠勤せず出勤することを奨励する」という手当の目的は、正社員もパートも同じです。正社員だけに支給し、フルタイム勤務のパートに一切支給しない運用は、見直しが必要です。
落とし穴③:賞与が「完全ゼロ」で納得できる理由がない
正社員に数ヶ月分の賞与を出し、長年会社に貢献しているフルタイムパートに寸志すら出さない場合、「会社の業績への貢献」という観点から説明が困難になります。少額でも業績連動の一時金を支給するか、基本給の時給設定に反映している根拠を明文化しておく必要があります。
【実務直結Q&A】事業主・社労担当者が知っておくべき疑問3選
Q1. パートから質問されたら、必ず「文書」で回答しなければなりませんか?
A. 法律上は口頭でも可能ですが、「書面の手渡し」を強く推奨します。 口頭だけだと「そんな説明は聞いていない」「言いくるめられた」とトラブルが再燃しやすいため、待遇差の内容と理由を箇条書きでまとめた簡易な説明書面を交付し、控えを保管しておくのが実務上最も安全です。
Q2. パート社員の待遇を、正社員とまったく同じ(同額)にしなければ違法ですか?
A. 同額にする必要はありません。 求められているのは「均等(まったく同じ)」ではなく「均衡(仕事や責任の違いに応じたバランス)」です。業務の責任、トラブル対応の範囲、転勤の有無などに違いがあれば、それに応じた金額の差をつけることは完全に適法です。
Q3. 「職務分析・職務評価」を自前でやる自信がありません。どこに相談すればよいですか?
A. 各都道府県の「働き方改革推進支援センター」で完全無料の個別サポートが受けられます。 社会保険労務士などの専門家が会社を訪問(またはオンライン)し、自社の賃金規程の点検から職務評価の導入まで手取り足取り伴走してくれます。
【今すぐできる】10月1日に向けた実践アクションチェックリスト
施行直前の今週中に、社内で以下の4項目を必ずチェックしましょう。
- 自社の就業規則・賃金規程を取り出し、正社員とパートの「手当一覧」を横並びで比較したか
- 通勤手当、精皆勤手当、食事手当など「目的が明確な手当」に説明できない格差がないか点検したか
- パートスタッフから待遇について質問があった際の「相談窓口・説明担当者(社長や労務担当等)」を決めたか
- 厚生労働省の 働き方改革特設サイト で無料セミナーの開催日程や支援ツールの活用法を確認したか
まとめ:「説明できる仕組み」が最強の採用・定着ツールになる
「待遇差の説明」と聞くと、身構えてしまう経営者や労務担当者の方も多いかもしれません。
しかし、自社の仕事内容と手当の理由を客観的に整理し、従業員にオープンに説明できる体制をつくることは、現場の不信感を解消し、「正当に評価してくれる安心な職場」として従業員の定着率を高める絶好のチャンスです。
国の無料セミナーや専門家派遣を賢く活用しながら、10月1日に向けて自信を持って説明できる労務体制を整えていきましょう。


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